「私じゃなくてもいい」から「私だからできる」へ——8年の「夫のための生活」を経てブランディングの世界へ|中野恵さん

中野恵さんインタビュー

今回お話を聞いたのは、中野恵さん。大学卒業後に営業職を経て、24歳で結婚し、そこから8年間アスリートである夫のサポート業を中心に過ごしました。その後フリーランスの営業を経て、現在は女性向けのブランディングコンサルティングを手がけています。「私には無理」と思っていたところから一歩踏み出した、そのリアルな道のりをお聞きしました。

キッチンメーカーの営業、そして24歳での結婚

——まず、社会人として最初のキャリアから教えてください。

大学を卒業してから、大手の住宅設備メーカーに入って、toBの営業をしていました。ショールームで接客するんじゃなくて、家を建てるハウスメーカーの営業担当者のところに直接会いに行くスタイルで。たくさんある住宅設備のメーカーの中から、自社製品を選んでもらうための営業です。東京でやっていました。

——仕事の環境としてはどうでしたか。

そうですね、現場は男性ばかりで、建設業に近い雰囲気でしたし、なかなかハードでした。それでも2年間やり続けていたんですが、24歳のときに夫と結婚して、そこで仕事を辞めることにしました。

——結婚を機に辞めたのはどうしてですか?

夫がサッカー選手で、仙台のチームに移ることになったんです。総合職で営業を続けるのは、それだと現実的に難しかった。それに、ちょうど環境も変わるタイミングだったので、ついていくことにしました。

8年間の「夫のための生活」と「寝る前のざわめき」

——結婚後の8年間は、どのように過ごされていましたか?

夫の食事管理や、経費関連のマネジメント業などのサポートをしていました。サポートすること自体は楽しかったし、夫は子煩悩で毎日幸せで、充実しているなという感覚もあった。でも、寝る前になると「果たして私はこれでいいのか」って、ふつふつと考えてしまうことがあって。繰り返し出てくる感覚でした。「今まで頑張ってきた、その私はどこへいくのだろう?」という違和感がずっとそこにあった。でも、じゃあ何がしたいのかというのも、当時はよくわかっていなかったんです。

フリーランスママの会での出会い

——その違和感が動き出すきっかけになったのが、フリーランスコミュニティへの参加と聞いています。

「フリーランスママの会」というのを見つけて。「フリーランスになれていない方でも、興味がある方なら大丈夫です」と書いてあったので、じゃあ行ってみようかなと思って参加してみたんです。

——そこで営業としてお声がかかった。

はい。その会に「Malia」というママ向け媒体でWebデザイナーをされている方がいらして、私が喋り倒しているのをずっと見ていたらしくて(笑)。「この人、営業できそう」と思ったんでしょうね。代表の方に紹介してもらって、営業の仕事のオファーをいただきました。会に差し入れを持っていったりしていたのも、営業気質だと思われたみたいです。

「私じゃなくてもいいのかな」という感覚

——そこからフリーランス営業として活動されたわけですね。でも、そこでもまた違和感が生まれた。

営業となると、代行の仕事が多くて、メールを送ったり事務的な作業が増えた時に、だんだん「私の気持ちが全く乗らないな」と感じるときが出てくることもあって。「これ私じゃなくても良いんじゃないかな」といった感覚というか……。

私は自分の経験を持って、直接誰かに価値を届けたいという気持ちが強くなってきていました。誰かの指示を実行するんじゃなくて、自分で考えて、自分で動く方が熱量をもって進められるし、「人のために役に立ってると感じられる」そんなふうに思うようになりました。

湘南から秋田へ、そしてブランディングとの出会い

——その後、湘南から秋田へ転居されたんですよね。今の暮らしはどうですか?

秋田は過ごしやすいですよ。クマは出ていますけど、会ったことはなくて(笑)。みんな慣れていますし、予防のシステムもしっかりしているので、そこまで怖くはないです。以前生活していた湘南とは違った静けさがあって、自分に集中するには、むしろ良い環境だなと思っています。

——秋田に来てから、ブランディング事業を始めることになる。

秋田に来てから、メンターにお金を払って相談をしたんです。自己分析をしていく中で、「美」に関してすごく強い思いがあると指摘されて、「美」に関することをやった方が良いと。最初は「絶対無理でしょ」と思いました。「美に関する仕事」って、コスメカウンターのBAさんとかスタイリストさんとか、もっと専門的な人がやるものというイメージがあって。

——そこからどう変わったんですか?

営業で培ってきた、人の内面を見抜く力をブランディングに活かせると言われたんです。そう言われたときに、あ、そういう視点で自分を見たことがなかったな、と気づいて。それならば、まずはやってみようと決めました。

逆から入るブランディング

megumi interview

——今どんなブランディングをされているのか、教えてもらえますか?

まず最初に、相手の写真やインスタグラムを見て、私が感じるその人の世界観を先に提示するところから始めます。普通は聞き取りを先にすることが多いと思うんですけど、あえて逆にしています。

——逆から入るのはなぜですか?

先に聞き取りをしてしまうと、相手が「こうあるべき」と思っている自分の話になりがちなんです。でも先に私から、外から世界観を提示すると、「あ、確かにそうかも」とか「なんかそれ違う気がする」という反応が出てくる。その違和感や反応から、本当にやりたかったことを引き出せるんです。

——なるほど、実際「他人から見ている印象」を伝えるような感じですね。

まさにそれです。自分では気づけていない部分って、外から見てもらわないとわからないことが多いので。その人からイメージされる国や、建築、色彩などを使って「あなたにはこういう世界観が似合う」という形で提示することもあります。18年間の海外生活の経験も、そこで活きているかなと思っています。

相談に来る女性たちの共通した悩み

——恵さんのもとにはどんな方が相談に来ますか?

自信がない方がとても多いです。何をしてもしっくりこない、という悩みを抱えている方が多くて。あと、自分が人にどんな印象を与えているかという客観的な視点が持てていない、という方もよくいらっしゃいます。

——「しっくりこない」は、具体的にどういう状態ですか?

自分のSNSを見ても「なんか違う」、発信しても「なんか違う」、やろうとしていることも「なんか違う」って。頑張っているのに、どこかちぐはぐな感覚がある状態です。

——そこにどうアプローチするんですか?

まず、自信がない方には、言葉にして伝えることをすごく大事にしています。「可愛いですね」「素敵ですね」じゃなくて、「洗練された」「エネルギッシュ」「親しみやすい」など、その人を表す具体的な言葉を投げかけていく。言葉が変わると、マインドセットも変わるんです。「私ってそういう人なんだ」という自己認識が少しずつ変わっていくのを、セッションの中で一緒に感じていけるのがやりがいですね。

「私には無理」の向こう側へ

——このメディアを読んでいる方へ。「やりたいことはあるけど自信がない」「自分には無理だと思ってしまう」という人に、何か伝えたいことはありますか?

私自身が「絶対無理」って思っていたので(笑)。でも、「無理」と思っていたことって、意外と自分の強みが形を変えたものだったりするんですよね。営業の経験がブランディングにつながるなんて、言われるまで全く思っていませんでした。ぜひ「できること」で考えるのではなく、「自分の強み」で考えてみてほしいな、と思います。

——自分では見えない、ということですね。

そう。だから、信頼できる誰かに「あなたにはこういう力がある」と言ってもらうことって、思っている以上に大事だと思います。自分一人で自分のことを見ようとすると、どうしても「できない理由」の方に目がいきやすい。

それに、私も8年間ずっと「果たして私はこれでいいのか」という違和感を持ちながら過ごしていました。その違和感、実はすごく大事なサインだと思うんです。自分の中のその感覚こそ、動き出すためのエネルギーになる。しっくりこないなら、しっくりくるものを探せばいい。「私には無理」の向こう側に、意外と自分らしいものがあったりしますよ。

——自己効力感が低く、「私なんかが」と思っている女性に伝えたいことは?

「自己効力感を上げよう」と思うことを、一回忘れてほしいんです。意識するほど考えすぎて、動けなくなる人がすごく多い。「私なんかが」と思っている女性って、実は能力がないんじゃなくて、自己受容が低いだけだったりするんですよね。

それより、自分に夢中になってほしい。今日何を食べたらワクワクするか、何を着たらワクワクできるか——そういう小さなことを人の目を気にせず考えてみる。自分を社会の一部ではなく、自分の人生の主人公として生きる。映画の主人公みたいに!うまくいかないことも含めて、全部その物語の一部だと思えたら、自己効力感は勝手に上がっていきます!(笑)

中野恵さん

■profile:中野恵さん

魅力を価値に変える【Embrace Branding】講座主宰

大学入学までの18年間をドイツで過ごす。
営業ひとすじから、8年間夫のサポートが中心の生活を経て、その人が持つ本来の魅力を磨き、世界観・ビジュアル・言語化で”選ばれる”ブランディングをプロデュースする。

中野恵さんブランディング講座情報

中野恵さん主宰の【Embrace Branding】では、2026年9月より6カ月間のブランディングプロデュース講座を開催します。

  • 見た目を変えたい
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