鍼灸師として約10年のキャリアを重ねながら、ピラティスインストラクターとしても活動するyukiさん。
サロンワークを軸にしながら、ランチ会や朝ピラティス、朝ラジオ体操といったコミュニティ活動も展開し、「ウェルネスを特別なものではなく、日々の積み重ね」として多くの人に届けています。
今回は、鍼灸師を目指した原点から、独立の経緯、そして施術の根底にある「すべてを受け入れる」という哲学まで、じっくりとお話を伺いました。

■今回お話を伺った方:yukiさん
鍼灸師 / ピラティスインストラクター
恵比寿の鍼灸サロン「le;set」オーナー
オンラインコミュニティ『ComfortMe』運営
オンライン部活『おうちウェルネスハピネス部』運営・講師
鍼灸師・ピラティスインストラクターとして、自身が適応障害になった経験をもとに「ウェルネスは特別なものではなく、日々の積み重ね」を多くの人に伝える活動をしている。オンラインコミュニティの「Comfort Me」の運営にも携わる。
現在の活動について
― まずは、現在の活動について教えてください。
主軸は鍼灸師とピラティスインストラクターで、サロンワークがメインです。
それに加えて、ウェルネスバランスコンサルタントという資格も取得しました。この資格では、分子栄養学や分子生物学の観点から、その方の習慣や体調、栄養素を紐解いていくセッションをオンラインで行います。
ほかにもオンラインコミュニティや部活のような場も運営していて、ランチ会や朝ピラティス、朝のラジオ体操などをやっています。
私自身、ウェルネスって特別なことじゃなくて、日々の積み重ねだと思っていて。そういう考え方を不特定多数の方に広めていく場として位置づけています。
鍼灸師を目指したきっかけ
― もともと鍼灸師を目指されたきっかけは何だったのでしょうか。
大学までずっと水泳に打ち込んでいたので、進路を考えたとき、なんとなくOLは違うかな~と思ってはいました。スポーツ科学など人体に関する分野に進む道も興味はあったのですが、大学自体は水泳推薦で進学していたので、別の学部にという条件が合わなくて。
そんなとき、たまたま通っていた整骨院の先生や、そこに通う患者さんたちの雰囲気にすごく惹かれたんです。それが出発点でした。
― 整骨院の雰囲気に惹かれた、と。
そうなんです。その先生に整骨に興味があると話したところ「鍼灸が良いんじゃない」と勧めて頂いて。
鍼灸の学校へオープンキャンパスに行ってみたら、東洋医学の世界観に「この世界、好き!」とすっかり惚れ込んでしまいました(笑)。すぐに、この道に進もうと決断しました。
鍼灸という新しい世界に出会えたことは、今振り返ると大きな転機だったなと思います。
会社員時代と独立に至るまで
― 資格を取得されたあとは、すぐに独立されたのでしょうか。
最初は恵比寿にある自費治療の鍼灸サロンに就職しました。2年目からは店長を任されるようになって、人事や労務なども幅広く担当していました。
― 責任のある立場を早い段階で任されていたんですね。そこから独立に至るまでには、どんな経緯があったんですか。
出産後に復職したんですが、サロンの営業時間が昼から夜までで。うちは夫が飲食業をしていて夜は家にいないという環境だったので、私が夜は子どもを見る必要がある。そうなると、営業時間の前に指名の患者さんを対応して、その分早めに退社するなど、業務をひとりで抱え込んでしまっていたんです。
会社としても、産後に復職した例が私しかいなかったこともあって、周りに相談しにくい状況もありました。
― それは、心身ともに大きな負担だったのではないでしょうか。
そうですね。結果的に自分で自分を相当に追い込んでしまっていたのだと、今だからわかります。
最終的に適応障害になってしまって、3ヶ月ほど休職しました。ただ、休職中も「この仕事を、鍼灸を続けたい」という気持ちははっきりしていて、復職するつもりでいました。「一生この仕事をしていく」と決めて、今は休む決断を、と休職することにしました。
― それでも独立という道を選ばれたのは、どうしてだったんですか。
休職中にまずは自分のことを整えることを最優先にしていました。でも、夫の仕事との兼ね合いや、サロンの営業時間といった部分で、自分の家庭や環境に関しては休んでも変わるものではなかったんですよね。
子どものことも考えると、このままの働き方ではまた同じことを繰り返し、家族にもお客様にも迷惑をかけてしまうのが目に見えていました。
でも、お休みがあったことで、それまですれ違い続けていた夫ともコミュニケーションを取ることができるようになりました。「人生という大きな視点」で話ができたことで、独立の後押しもしてくれたんです。
何より、私の復帰を心待ちにしてくださっているお客様がいたことが一番大きかったですね。私が、私自身の背中を最後押すことができた。「うまくいくかわからないけど、まずやってみよう!」という気持ちになれたので、復帰ではなくそのまま退職という形を取ることにしました。
ピラティスインストラクターになるまで
― 鍼灸師として独立されたあと、ピラティスを始められた経緯を教えてください。
独立してしばらく経つと、「やっていることが前のサロンとほとんど同じだな」という疑問と不安があって。
独立したことによって予約は取りにくくなった、値段は上がった、クオリティは変わってないのに……。
「それで、本当に良いのかな」と自分自身に疑問を持った感じですね。「これって、いつかお客さまは離れてしまうよね」って。le;setである理由、私である理由を作っていくときだと思っていたんです。
― そこでピラティスと出会われたんですね。
もともとピラティスは習っていたんです。それまではグループレッスンだったのですが、休職中にパーソナルレッスンを受けたときに、その考え方と構造にすごく惹かれて。
なんだこれは!とまさに雷に打たれた感覚で(笑)今まで私がピラティスだと思っていたものが、ピラティスのピの字もわかっていなかったことに衝撃を受けたんです。
「これは、今の施術をよりみなさんのためにブラッシュアップできる!」と直感的に感じて、ものすごくワクワクしたことを覚えています。
ただ、最初からインストラクターになるつもりだったわけではなくて、あくまでピラティスの理論を理解して、鍼灸の施術に応用したいという目的でした。
― インストラクターとして活動を始められたきっかけは何だったんですか。
資格を取ったあと、練習を兼ねてInstagramのストーリーズで「ピラティスレッスンをやります!受けたい方いますか?」と投稿してみたんです。
当時フォロワーは200〜300人くらいの規模だったんですが、そこから10人ほどリアクションがあって、実際に9人くらいが参加してくれました!既存のお客さまじゃない方も半数以上含まれていて、すごく嬉しかったのを覚えています。
そこまでピラティスの需要があることにも驚きましたし、見てくれているフォロワーさんに対しても、何か返せることがあるんだ!と。独立を支えてくれている皆さんのお役立てるなら、喜んで!という気持ちでしたね。
そこから鍼灸と並行して、ピラティスも私の大切な一つの軸になっています。
鍼灸における施術哲学 ― 「すべてを受け入れる」という核心
― 施術のなかで、大切にされている考え方について教えてください。
鍼灸の施術は90分から120分くらいなんですが、私の場合、最初の30分ほどは「フラットにする」ことに集中しています。
そうすることで、皆さんの本質が見えてくるんですよね。本当の凸凹は何なのか。そもそも凸凹があるのか。
こんなことを言うと、スピリチュアルっぽく聞こえるかもしれません。(笑)でも、人間は感情がある生き物だからこそ、目に見えない情報の方が、本来は圧倒的に多いんです。
だからこそまずフラットにしてから、体のこわばりや頭の硬さを観察しながら状態を把握して、お客さまが言っていることと体の状態のズレも読み取るんですけど、それに対して「ジャッジしないこと」をすごく大切にしています。
― 「ジャッジしない」というのは、具体的にはどういうことなんでしょうか。
体の状態って、すべて何らかのアクションの結果だと思っているんです。
自分は毎日一生懸命で、良かれと思って生きていて。それを頭ごなしに「ダメだね」「イマイチだね」なんて言われると、なんだか虚しくないですか?
自分自身が自分にとっての最大の味方でいてあげることが自己理解の最初の出発点だと私は思うんです。
だから、こわばりがあるから悪いとか、やわらかいから良いとはジャッジせずに、体の声を客観的に聞き続けることを大切にしています。
― その考え方の背景には、ご自身の適応障害のご経験があるのでしょうか。
はい、大きいですね。自分をジャッジしてしまうことが、適応障害の一因だったと今は理解しています。
当時、吃音のような症状も出ていたんですが、それも今では「体が自分を守るために出してくれた反応」なんだと捉え直せるようになりました。
この経験が、今の「体への愛」や「ジャッジしない姿勢」の根拠になっています。
― 鍼灸そのものは、yukiさんのなかでどんな位置づけですか。
自己理解のための「最初のツール」だと思っています。
心も体もフラットな状態にしたうえで問題を浮き彫りにして、そこから対話と施術の内容を組み立てていく、というイメージです。
コーチング的な要素も取り入れていて、プロコーチの方が講師をしているコミュニケーション講座で学んだことが、「鍼灸以外の分野を学ぶことへの抵抗」を超えるきっかけにもなりました。
― 以前は、他分野を学ぶことに抵抗があったんですね。
そうなんです。「鍼灸以外を学ぶと、鍼灸の価値が薄まってしまうんじゃないか」という思いがあって……。他分野の学習をどこか敬遠していました。鍼灸を大切思うからこそ「鍼灸で、なんでもできる!」と言いたかったというか(笑)。
でも適応障害を経験するなかで、メンタルと体の深い繋がりを実感して。コミュニケーションや脳科学、人間心理の学びが、施術中の問診や対話に直結するんだと気づいてから、考え方が変わりました。
yukiさんがこれから実現したいウェルビーイング
― 最後に、yukiさんがこれから実現したいことを教えてください。
「自分と自分の周りの大切な人が幸せに、健康に生きるための土台=ウェルネス」という考え方が広がっていくと良いなと思っています。
外見を整えるより先に、健康や人間関係、家族といった内側を整えることで、自己実現やチャレンジのための土台ができると考えているんです。
「誰より私が私を好きでいる」
そんな人ってとっても魅力的ですし、放つオーラはそれは聡明で凛々しいのではないかなと。そんな空気感に人は魅了されると思うんです。きらびやかではなく、凛としていて芯がある、私はそんな人でありたいんだと思います。
「まず私から、私の家族から」という姿勢で日々実践していて、「よく眠る」「よく食べる」といった当たり前のことが、少しずつ周りに広がっていったらいいなと思っています。

