仕事を抱え込む私が気づいた「責任を持つ」と「なんでも背負う」の違い

あやめしさん

「任された仕事なのだから、最後まで自分がなんとかしなければ」
「誰かに迷惑をかけるくらいなら、自分が頑張った方がいい」

仕事をしていて、そんなふうに考えたことはありませんか?

責任感を持って仕事に取り組むことは、大切なことです。けれど、「責任を持つこと」と「なんでも自分で抱え込むこと」は、本当に同じなのでしょうか。

約8年間の会社員生活を経て、現在はフリーランスのWebライターとして働く私も、かつては「自分がなんとかしなければ」と仕事を抱え込みがちでした。

働き方も暮らし方も大きく変わった今、ようやく見えてきたのは、責任感そのものを手放さなくても、仕事との距離は変えられるということ。

今回は、会社員時代と現在の働き方を振り返りながら、「仕事に責任を持つこと」について考えてみたいと思います。

あやめしさん

■この記事を書いた人:あやめしさん

エッセイスト・ライター

フリーランスのライター・エッセイストとして、暮らしや働き方など、さまざまなテーマでWebメディアの記事制作に携わる。会社員として働いたのち、2024年にフリーランスへ転身。個人ではnoteを8年以上にわたって毎日更新しており、日々の暮らしのなかで感じたことや、働くこと、書くことについて発信中。何気ない日常のなかにある感情や気づきを、自分なりの言葉で丁寧にすくい上げることを大切にしている。読む人が自分自身の暮らしや生き方を見つめる、ささやかなきっかけになるような文章を執筆する。

仕事を抱え込んでいた会社員時代は「自分がなんとかしなければ」が口癖

仕事を抱え込む

会社員時代の私は、何かうまくいかないことがあると、「もっと自分にできることがあったのではないか」と考えることがよくありました。

もう少し早く動いていれば。もっと丁寧に確認していれば。別の方法を考えていれば。

もちろん、自分の仕事を振り返り、次に活かすことは大切です。けれど、仕事は一人だけで動いているわけではありません。相手がいることもあれば、チームで進めることもあります。自分の力だけではどうにもならない事情だってあります。

それなのに私は、そうしたことまで「もっと頑張れば、なんとかできたかもしれない」と考えていました。誰かに頼るよりも、自分でやった方が早い。大変でも、もう少し頑張ればできる。任された以上、最後まで自分がなんとかしなければ。そんな考え方が、いつの間にか当たり前になっていました。

仕事をしていない時間も頭から仕事が離れなかった

振り返ってみると、当時の私は、仕事をしていない時間にも常に仕事のことを考えていたように思います。

時間や曜日に関係なく連絡が入ることがあったため、勤務時間が終わっても、休みの日でも、社用携帯をこまめにチェックしていました。旅行先で電話に対応したことも、一度や二度ではありません。身体は会社から離れていても、頭の中にはいつも仕事がありました。

「あの件は大丈夫かな」
「何か連絡が来ていないかな」
「休み明けには、あれをやらなければ」

そんなことを無意識のうちに考えていました。

仕事のことを考えすぎていたからなのか、夢の中でも働いていることがありました。夢の中であれこれ対応し、目が覚めたときには、まだ一日が始まってもいないのにぐったりしている。そんな朝もありました。

今振り返れば、「そこまで考えなくてもよかったのでは」と思います。けれど、当時の私にとっては、それがそれほど不自然なことではありませんでした。連絡が来たら対応する。気になることがあれば確認する。自分が担当しているのなら、自分がなんとかする。むしろ、それが「責任を持って仕事をする」ということなのだと思っていたのかもしれません。

フリーランスになっても「責任」が軽くなったわけではない

約8年間勤めた会社を辞め、フリーランスのWebライターとして働き始めました。

フリーランスという働き方には、会社員よりも自由なイメージがあるかもしれません。確かに、働く時間や場所、どんな依頼を引き受けるのかなど、自分で決められることは増えました。

その一方で、自分自身で引き受けなければならないことも増えました。

納期を守ること。記事の品質を保つこと。クライアントとやり取りをすること。そして、これからどんな仕事をしていくのかを考えること。一つひとつの判断が、そのまま自分自身に返ってきます。

そう考えると、仕事に対する責任そのものは、会社員時代よりも今の方が直接的なのかもしれません。

それなのに、不思議なことに、以前よりも「なんでも自分が背負わなければ」と思うことは減りました。その変化には、会社員からフリーランスになったことだけでなく、私自身の暮らしが大きく変わったことも関係しています。

仕事の抱え込みを減らせたきっかけは「働ける時間の変化」

仕事を抱え込むのをやめる

会社員を辞めてフリーランスになった時期は、私が子どもを持った時期とも重なっています。働き方と同時に、暮らしも大きく変わりました。

それまでの私は、仕事が終わったあとも、休日も、頭のどこかで仕事について考えていました。けれど、子どもとの生活が始まると、そうはいきません。

現在は、子どもが幼稚園に行っている日中が、私にとっての主な仕事時間です。その間に記事を書き、調べ物をして、クライアントへの連絡をする。

使える時間が限られているからこそ、できるだけ集中して仕事を進めます。そして、子どもが幼稚園から帰ってくると、そこからは家事と育児の時間です。夕食を作って、一緒に食べて、お風呂に入り、寝るまでの時間を過ごす。

目の前に子どもがいると、会社員時代のように、いつまでも頭の中で仕事を続けているわけにはいきません。もちろん、子どもを持ったから「仕事とプライベートをきっちり分けよう」と意識的に切り替えたわけではありませんでした。

限られた時間で働くことで「仕事を抱え込む」をできなくした

環境が変わり、仕事だけに使える時間が限られたことで、これまでと同じ働き方ができなくなった。だから、そのときの自分に合うやり方を探していった、という方が近い気がします。

日中、一人でいられる時間には目いっぱい仕事をする。それ以外の時間は、家事や育児に切り替える。そんな生活を続けるうちに、以前よりも仕事を自分から切り離せるようになりました。

かつては旅行先にいても社用携帯を気にしていた私が、今は子どもが幼稚園から帰ってくればパソコンを閉じています。仕事に使う時間が短くなったからといって、仕事を大切にしなくなったわけではありません。

むしろ時間に限りができたことで、「その中で自分がきちんとやるべきことは何なのか」を考えるようになりました。

「自分にできること」と「どうにもできないこと」を分ける

フリーランスとして働くようになってから、以前より意識するようになったことがあります。

それは、「自分にできること」と「自分にはどうにもできないこと」を分けることです。

依頼された記事を期限までに提出する。必要な情報をきちんと調べる。読みやすい文章になるよう推敲する。分からないことがあれば確認する。何か問題が起きたら、できるだけ早く相談する。これらは、自分にできることです。だからこそ、きちんと責任を持ちたいと思っています。

一方で、自分にはコントロールできないこともあります。提出した記事を相手がどう判断するのか。公開された記事がどれくらい読まれるのか。予定していた仕事が変更になること。相手側の事情によって、物事が思いどおりに進まないこと。

もちろん、自分に改善できる部分があるのなら改善します。でも、「今の自分にできることはきちんとやった」と言えるのであれば、その先まで全部背負う必要はないのではないでしょうか。

会社員時代の私は、仕事をする時間が終わっても、頭の中では仕事を続けていました。
今は、限られた時間の中でできることをやったら、いったん仕事を置くようにしています 。

その繰り返しの中で、「仕事に責任を持つために、24時間仕事のことを考えている必要はない」と、少しずつ気づいていったのだと思います。

責任感は手放さず「向ける場所を変える」

会社員時代の私は、「責任を持つ」ということを、どこかで「最後まで自分がなんとかする」という意味に捉えていたのかもしれません。

でも、一人ではどうにもできないことまで背負い込んだからといって、仕事がうまくいくとは限りません。

誰かに相談すること。できないことを「できない」と伝えること。自分の手を離れたものについては、必要以上に抱え込まないこと。それもまた、仕事と長く付き合っていくためには必要なことなのだと思います。

「自分が背負うべきこと」を見極める 

だからといって、会社員時代の自分に「もっと適当に仕事をすればよかった」と言いたいわけではありません。責任感があったからこそ、任せてもらえた仕事もありました。最後までやり遂げた経験も、自分なりに積み重ねてきたものもあります。「きちんと仕事をしたい」という気持ちは、今の私にもつながっています。変わったのは、責任感そのものではなく、その向け方です。

もし今、「自分がなんとかしなければ」と仕事を抱えているなら、一度こう考えてみてもいいのかもしれません。

「これは、本当に私が背負うべきことだろうか」
「今の自分にできることは、どこまでだろうか」

そうやって境界線を引くことは、決して無責任なことではありません。

私自身、会社員からフリーランスになって、仕事に対する責任がなくなったわけではありません。むしろ、自分の名前で仕事をするようになった今の方が、一つひとつの仕事に対する責任は明確になりました。

それでも以前より身軽に働けているのは、ようやく「責任を持つこと」と「なんでも背負うこと」は違うと分かってきたからなのだと思います。

仕事を抱え込むときこそ「自分が背負うべきこと」を見つめ直そう 

仕事をきちんとやりたい。周りに迷惑をかけたくない。任されたことには最後まで向き合いたい。そんなふうに思える責任感は、きっと大切にしていいものです。

だからこそ、その責任感を、自分ではどうにもできないことにまで向けなくてもいいのではないでしょうか。

「自分がやらなければ」と苦しくなったときは、自分が背負っているものを、一度ひとつずつ見つめてみてください。

その中には、あなたが背負わなくてもいいものが、混ざっているかもしれません。

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